コラム『ごみは異なもの味なもの』
第10話 - 水の特性
2009/09/09 NPO法人理事長 広瀬立成
さて、水分子は、酸素原子が両手を広げ2個の水素原子と手をつないでいる、という構造をもつ。ただし、広げた両手が水平(180度)ではないことがミソ。真ん中にいる大人が、両側の子供と手をつないだとき、両手が下がることに似ている。実際の両手の角度は105度で、この一見中途半端な角度が、水の特性を決める重要な量になっている。
水の第一の特徴は、その立体構造。

それは、図に示すように、きわめて隙間の多い構造で、水蒸気の時にはばらばらになっていた水分子も、氷になれば無限に連なった結晶になる。氷の結晶は、いわば、水の巨大分子というべきもので堅くて軽い。0℃における氷の比重0,917は、水の比重0.998に比べて、10%ほど軽い。だから、氷は水に浮く。水になると結晶が部分的に崩れるので、氷より重くなるというわけだ。水蒸気では、個々の水分子がばらばらになって運動するから、氷や水に比べてはるかに軽くなる(体積が大きくなる)。
氷は水面に浮かんでいるから、冬にできた氷も、夏になれば、強い日ざしによって融ける。このようなことが繰り返され、氷と水の定常システムがなりたっている。
もし氷が水より重かったどうなるか。
表面で氷った水、すなわち氷は、海底に沈む。海底が太陽の光が届かないほどに深ければ、氷は二度と融けることはないであろう。北極や南極の近くでは、できた氷はたえず海底に沈み込むにちがいない。こうして、長い地球の歴史の中で、海水の大部分は氷に変り、海底には氷が堆積することになる。今のように、地球の3分の2を占めるような大海は形成されなかったであろうし、そうであれば、豊富な魚も発生しなかったにちがいない。そもそも、そのような海の中で生命が誕生したかどうかも疑わしくなる。
厳寒の朝、わが家の小さな池に氷が張る。よく見ると、氷の下で金魚がじっとしている。昼になるともう氷が融けて、魚が水面近くでのんびりと遊泳している。こんな風情を楽しめるのも(氷が水より軽いという)水の特性のおかげである。固体の方が液体より軽い天然物質は、水くらいのものだろう。
水の第二の特徴は、物をよく融かすということだ。私たちは、砂糖や塩などを融かすことを通じて、この特徴を日々実感している。この性質も、“105度”に原因がある。詳細は省くが、H-O-Hが「く」の字になることによって、水分子が他分子の間に入り込みやすくなるのである。たとえば、塩(Nacl)を融かす場合。ナトリウム原子(Na)と塩素原子(cl)のあいだに入る水分子の数は、4〜6個といわれる(物理学の言葉でいえば、水分子は全体としては電気的に中性であるが、プラス電荷とマイナス電荷の中心がずれており、いわゆる「電気双極子モーメント」をもち、それが他の原子との電気的な結合を容易にする、ということになる)。
水の第3番目の特徴は、すでに度々触れてきたように、気化熱が際立って大きいことだ。この特性は、熱についての物理学「熱力学」を発展させる上で大きな役割を果たした。
