コラム『ごみは異なもの味なもの』

第15話 - 物質不滅の法則から何がわかるか

2010/01/01  NPO法人理事長 広瀬立成


 環境問題に重要性な示唆を与える法則が、「物質不滅の法則」の法則である。

 日本では昔から「燃やす、埋める、水に流す」という行為がふつうに行われてきた。

 日本は世界の焼却炉の2/3が集まる焼却大国。今日、標準的な焼却炉で、1日100トンのゴミを燃やす。たしかに、燃やせばもとのゴミは、そのほとんどが水蒸気と二酸化炭素になって、目の前から消えたように見えるが、ゴミのはじめの質量(100トン)が減ったわけではない。つまり、燃やした後に残ったガス(水蒸気、二酸化炭素など)と焼却灰の質量を加えれば、それはぴたりとはじめのゴミの質量(100トン)に一致する。「物質不滅の法則」は、いかなる処理によっても、物質の総量(質量)が変わらないことを示している。

 日本が島国でまわりを海に囲まれているせいか、昔から「水に流す」といって、それまでのもめごとにけりをつけることがよくある。私たちは、水に流せばすべては消えてなくなってしまうと思いがちだ。かりに、ここに1トンの有害物質があったとする。これを直接川に流したとすれば、ただちに魚が汚染され、それを食べた人間に病害が現れる。半世紀ほど前の高度成長時代の公害の一つ、水俣病は、大量の有機水銀を無造作に廃棄したことが原因だった。

 その後、環境基準が厳しくなって、有害物質は基準値以下にして廃棄することが求められるようになった。たとえば、100万分の1(1ppm)以下の濃度にして棄てる、というぐあいである。それならば、1トンの有害物質も、100万トンの水に薄めれば棄ててもかまわない、ということになる。しかし、「物質不滅の法則」は、いくら環境基準をきびしくしても決して有害物質の総量が減ったわけではないこと、そして、こんなやり方を多くの場所で続けていれば、世界中の海がうっすらと汚染され、長期・微量・複合汚染という特徴をもつ現代の公害が蔓延することに気づかせてくれるのだ。