コラム『ごみは異なもの味なもの』
第17話 - すべてのものは拡散する
2010/02/28 NPO法人理事長 広瀬立成
先にものべたように、「保存則」は、変化の連続性(初めと終わりの関係)を明らかにする。すなわち
という変化の静的な性質が明示されても、インクの拡散という動的なしくみについては何の知見もあたえない。
これに対して、「エントロピー増大の法則」は、拡散の度合いを示す法則で、
というように、不等号(<)であらわされ、時々刻々変動している自然現象を記述することができる。インキの場合、初めと終わりの拡散の度合いは、明らかに初めの方が小さい。すなわち、初めの状態のエントロピーは、終わりの状態のエントロピーより小さいということになる。
エントロピー増大の法則によれば、自然界の現象は、かならず拡散する方向に進む。それは、物質が広がってゆくことであり、熱は高温から低温に伝わることを意味している。このようにエントロピーは物質または熱に付随して存在する。このことを明示するため、以下では、「物エントロピー」「熱エントロピー」として両者を区別しよう。この法則が、物質と熱の両方を取り入れている所が肝心である。
環境エンジンは、固まった物質が拡散する過程で仕事をするのだから、拡散しきった物質は、仕事をする能力を失っていることになる(ガソリンエンジンから排出される廃棄ガスを想像してほしい)。いかなる現象でも、何もしなければ、拡散はいつか終わり熱平衡状態すなわち熱死が訪れる。それは、いかなる活動もありえない静寂な世界である。
熱死を避け、環境エンジンが持続的に活動するためには、高エントロピーの物質・熱の排気の道筋を確保し、低エントロピー物質・熱を補給する必要がある。30億年以上にわたり生存し続けてきた生命には、そのようなしくみが備わっている。
エントロピー増大の法則は、あらゆる現象が高品質状態から低品質状態へ進むことを示している。あるいは、いささか俗な言い方ではあるが、きれいなものは汚いものになる、ということができる。こう表現すれば、この法則が、ごみに関係していることが何となく想像できるだろう。まさしく、ごみの焼却や埋め立ては、エントロピー排気の典型で、これに科学の光を当てることによって、ゴミとは何か、ゴミ処理はいかにあるべきか、そして、持続性の意味などを明るみに出すことができる。
