コラム『ごみは異なもの味なもの』
第5話 - 人間もエンジンである
2009/07/30 NPO法人理事長 広瀬立成
「人間エンジン」が、物質を排出することの重要性は、便秘の辛さを思えば納得できるだろう。熱の排出についても同様で、人間は常に汗をかいて(熱を放出して)体温を調整している。強い日差しの下で、もし水分が不足して汗が出なくなると脱水症を起こしたり熱射病にかかったりして健康を害する。
この例からもわかるように、環境エンジンは、まわりの環境と絶えず物質やエネルギーのやり取りをすることによって正常に活動することができる。エネルギーとは仕事をする能力のことで、位置のエネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなど、いろいろな種類があるが、それらは互いに転化する(以下では、熱エネルギーを扱うことが多いので、紛れのないかぎりエネルギーを単に「熱」と書くことにする)。
このように、まわりの環境とのあいだで、物質・熱のやり取りをするシステムを、外に開かれたシステムという意味で「開放系」と呼ぶ。生命圏で活動する環境エンジンは、すべて開放系である。
ところで、開放系としての環境エンジンが活動を続けるためには、エンジンを通して物質・熱が滞りなく流れていなければならない。このような状態を「定常状態」とよぶ。人間にとっての定常状態とは、「快食、快眠、快便」が毎日規則正しく繰り返され、従って、健康状態が保たれていることを意味する。また、最近よく言われる「持続ある地球」とは、地球の生命圏(それは、せいぜい高度10㎞までの大気と深度10㎞ほどの海洋)を環境エンジンと見立てたとき、それが、定常状態であることに他ならない。地球は、これまでの長い歴史の中で、火山活動や暴風などさまざまな活動によって、エネルギーを生産してきた。にもかかわらず、生物が35億年ものあいだ途絶えることなく生き続けてきたのは、1年間のサイクルを35億回も繰り返しつつ、定常状態を保ってきたからだ。持続性の秘密がここにある。
環境エンジンが、仕事を終えた後、廃棄物(物質・熱)を放出するためには、環境エンジンを包み込む外側の環境に廃棄物を取り込む余地がなければならない。人間の場合なら、活動で発生した熱をまわりの環境(例えば、その人がいる部屋)が受け入れる必要がある。それは、汗の蒸発(水が水蒸気になること)によって行われるが、水蒸気を受け取った環境(部屋)は、さらに、その外側の環境(例えば、大気)に熱を放出する。さもなければ(もし部屋が密閉されていれば)、そこにいる人はいずれ排熱できなくなり、熱死してしまうだろう。
