コラム『ごみは異なもの味なもの』
第8話 - 金星はビーナス(美の女神)か
2009/08/26 NPO法人理事長 広瀬立成
身の回りを見渡してみよう。水道の水は別として、川、田んぼ、池、湖、海・・・というように、水はどこにでもある。とくに、海に囲まれている日本では、昔から、人々の生活は水と密着していて、生活習慣はもとより、国民性も水によって育まれてきた。水と日本人の関係については、後段で詳しくお話しすることにして、ここでは水の惑星地球の特質をもう少し見ておこう。
地球上には、莫大な量の水が存在する。地表の2/3を占める海洋の水量を1000とすると、極氷と氷河が22、地下の含水層に6.2。大気中の水は0.01というわずかな量だが、気候や資源の分布に与える影響は、はかり知れないほど大きい。
地球が水の惑星であることを確かめるため、地球のすぐ内側の惑星、金星に目を移してみよう。
金星は、地球とほぼ同じ大きさ(体積が地球の0.9倍)で、太陽、月につぐもっとも明るい星。宵の明星、明けの明星として知られており、ヨーロッパでは美の女神ビーナスよばれる。だが、それは外見だけで、大気の底に降り立てば、そこは、美の女神にはほど遠い恐い姿が待ち受けている。大気は二酸化炭素(温暖化ガス)が90%以上、表面の圧力は90気圧、そして、地表は太陽の光が届かない暗黒の世界。さらに、地表温度が約500℃という灼熱地獄なのだ。
地表温度が高いことは、金星が太陽に近い(地球−太陽間の約0.7倍)からではない。たしかに、金星は地球に比べ約2倍の日射を受けるが、ドライアイスなどの厚い雲があって太陽光をほとんど反射してしまうため、金星大気の上空の温度は地球に比べてずっと低い。一方、金星の大気には水蒸気がほとんどなく、したがって、地球のように水による冷却機構が存在しない。つまり、金星は、物質・熱の流れがほとんどない「閉鎖系」になっている。それは、地球のような生きた世界(定常開放系)ではなく、死の世界なのだ。
水は気化熱が大きいので、効率よく熱を奪う。前回でのべたように、地球では、重力、大気の比重と温度、水の特性のあいだには絶妙のバランスなりたっており、それが、水の持続的な循環(大循環)を引き起こしつつ、宇宙空間への放熱を可能にしているのだ。地球にそなわった天文学的な特性が、地球を水の惑星にしていることがわかる。
今から2500年前、イオニア自然学派の始祖といわれるターレスは、「万物の根源は水であり、あらゆるものは水から生まれ、水に帰る」とのべ、活発な生命の活動を水の流れに求めた。
古来、水の豊かな国といわれたてきた日本。日本人は、水の尊さ、美しさを敏感に感じながら、水を暮らしの中に取り入れ、日々を心豊かに過ごしてきた。このことは、日本語に水の音を表現する多くの音声語があることからもわかる。雨が「しとしと」「ぱらぱら」「ぽつぽつ」「ざーざー」降り、小川は「さらさら」流れる。波は「ざぶーん」「どぶん」と打ち寄せ、水滴は「ぽたぽた」「ぽとんぽとん」としたたり落ちる。
水は、どこにでも存在するもっともありふれた物質。だからこそ生物は、地球上のあらゆる場所で繁栄することができるのだ。
